人事制度の未来を語る

日本の未来を明るくするために、人事制度コンサルタントである私に何ができるかを探求したいと思います。

管理職を人事評価から解放する取り組み

人事評価は、管理職さんと部下の双方にとって、大きなストレスになっています。


人事評価のストレスから解放され、人事評価に使っていた時間をより建設的なことに使うことができる取り組みについて、記事を書いています。

 

前回は、上司が当然に持っていると考えられている「評価権」を手放すことについてお伝えしました。

今回はその考え方を背景に、当社が取り組んでいる自己申告型給与制度について、少しご紹介したいと思います。


■管理職が人事評価という義務から解放される

上司が持つ評価権を手放すということは、言い方を変えれば、管理職が人事評価をする必要がなくなるということです。

人事評価とは、評価される側の社員さんだけではなく、評価する側の管理職さんのストレスにもなってきました。

人事評価の結果が給与に連動するので、管理職さんにも「客観的」で「適正」な人事評価をする義務が課せられてきました。

また、部下が人事評価に納得していなければ、管理職としての評価スキルが足りないとみなされてきました。

しかし、管理職といえども人間ですから、評価にバイアスがかかることは当然ありますし、複数名の部下がいれば付きっきりで部下を見ているわけではありません。

完全に「客観的」で「適正」な人事評価など、不可能に近いことなのです。

また、人事評価の客観性を高めようとすれば、数値に表れる目標ばかりになります。

部下の立場からすると、目標の達成度によって人事評価の結果が変わりますから、達成する可能性の見込みが高い目標にしたくなります。

そうすると、管理職さんが本当にしてほしいレベルの目標になかなかならず、部下を説得するのに余計な時間がかかります。

最終的には、上司としての「権力」を発動して目標を変えさせることになり、管理職さんにとっても、部下にとっても後味の悪い感情を積み重ねてきました。

上司の「評価権」を根拠にした人事制度には、この他にもまだまだ弊害があるのですが、これらのことは管理職さんのスキルの問題というよりは、人事評価を決定する「構造」に問題があるのです。

上司の評価権を手放すことで、人事評価をする必要性がなくなり、これらのストレスから解放されるのです。

 
■過去ではなく「未来」を語り合う
 
当社の自己申告型給与制度は、「人が他者を評価するのは限界がある」という事実を前提にしています。

給与の決定根拠として、上司からの評価を用いるのは望ましくないので、「社員さん本人を含めた関係者で話し合って決めましょう」という考え方が自己申告型給与制度です。

また、過去の点数づけを喧々諤々に議論するよりは、未来のことを語り合う方が建設的なので、過去の実績ではなく、「未来の貢献に応じて給与を決めよう」という取り組みです。

このコンセプトの方が、社員さんご本人にとっても、会社や管理職さんにとっても、より建設的な給与決定になると考えています。