人事制度の未来を語る

日本の未来を明るくするために、人事制度コンサルタントである私に何ができるかを探求したいと思います。

管理職になりたくない本当の理由

さまざまなアンケートや統計で「管理職になりたい人が少ない」ということが明らかになっています。
 
管理職になりたくない理由としては、「出世欲がない」「責任と給与が見合わない」「管理職は大変そう」などの理由があがることが多いと思います。
 
ただ、私がお客さまの会社をサポートさせていただくなかで、管理職になりたくない理由は他にあるのではないかと思っています。

 

■自分で選択できないことが原因
 
私が設計・運用のお手伝いをしている自己申告型給与制度では、社員さん一人ひとりが次のような申告をします。
 
「私は次の期に、〇〇という役割をしたい」
「私は次の期に、これだけの貢献をするので給与を〇〇円にしたい」
「私は次の期に、こんな働き方をしたい」
 
つまりは、自分がやりたいことを申告してもらうのです。
 
社員さんの申告がすべて叶うわけではありませんが、一人ひとりが何を考えているのかを知ることができますので、会社はその実現を応援していくことができます。
 
では、管理職をやりたいという社員さんがいないかというと、若手社員さんを中心に一定割合は必ずいらっしゃいます。
 
このような現象を目にすると、実際には「管理職になりたくない」のではなく、「管理職になれるとは思っていない」のではないかと感じています。
 
つまり、管理職になることを「自分で決められない」ことが、根本の原因ではないかと感じています。
 
もし立候補することで実現する道が拓けるのであれば、チャレンジしようという社員さんは出てくるのではないかと思うのです。
 
  
■管理職になることがキャリアの全てではない
 
「管理職になりたくない人が多い」という議論を聞いて、もう一つ感じることは、「別に管理職になりたくなくてもいいじゃない」ということです。
 
管理職がキャリアの全てではありません。
 
これまでの日本において、キャリアパスが管理職になることに偏りすぎているように思います。
 
「キャリアの多様性」が異常に低いのです。
 
管理職になりたい人はなる努力をすればいいですし、なりたくない人の意思も同様に尊重されるべきです。
 
そういう視点で見ると、「管理職になりたくない人が多い」という議論そのものが、あまり意味のないように感じます。
 
それよりも考えなければならないことは、社員さん一人ひとりが思う「自分がどんなキャリアに挑戦したいのか」ということを表明でき、そしてその意思をサポートできる環境づくりではないでしょうか。
 
そういう環境が整っていれば、社員さんが自分のキャリアをより真剣に考え出すでしょうし、自分が歩みたいキャリアが管理職なのか、あるいは違う道なのかをご自分で答えを出すはずです。
 
これからの日本は、そういう「キャリアの多様性」がますます求められると思います。
 
ここまで、管理職という役割が必要だという「一般常識」に基づいて進めてきましたが、次回は「本当に管理職という役割が必要なのか」に触れてみたいと思います。