人事制度の未来を語る

日本の未来を明るくするために、人事制度コンサルタントである私に何ができるかを探求したいと思います。

給与制度が自律分散型になるには「お金のリテラシー」が必要不可欠です!

給与決定プロセスをティール(自律分散)的にすると、会社が給与を決めるのではなく、自分で決めることになります。

その条件として、社員さんが「お金のリテラシー」を持っていることが必要になります。

変化が激しく多様性に富む社会では、中央集権的な組織運営では対応できず、一人ひとりが自律的に活動する必要があります。

人事制度を自律分散型にすると、給与を自己申告するというカタチになることは、今までお伝えしてきた通りです。

しかし、給与を自己申告にするためには、さまざまな課題があることも事実です。

今回のブログも、給与を自己申告にするための3つの条件について解説します。

 
■お金のリテラシーが不足していることで発生する問題
 
給与を自己申告にするための3つの条件は、下記のとおりです。

1.組織の業績情報や、部門やチームごとの生産性などの情報がオープンになっている
2.すべての社員さんの給与が公開されている
3.社員さんがお金に対するポジティブな価値観とリテラシーを持っている

前回までで3番目の「価値観」まで解説しましたので、今回は「お金のリテラシー」について解説します。

リテラシー」という言葉のイメージは、「知識や情報を理解できて活用もできる」ということですので、

お金のリテラシーという言葉は、「お金についての知識や情報を理解して活用もできる能力」という意味で使っています。

お金のリテラシーとしては、主なところでいうと下記のことが挙げられます。

・家計(収入と支出)を適切に管理する
・ライフイベントに必要なお金の準備をする
・資産形成などによってお金を増やす

これらのリテラシーが不足していると、お金で困ることになります。

収入に合わせて支出を管理できていないと家計が苦しくなりますし、ライフイベントに応じた準備も出来なくなってしまいます。

お金をしっかりとマネジメントすることは、自分が望む人生を歩んでいくためには必要なことだと思います。

 
■自分の収入を考えることはキャリアを考えることにつながる
 
お金のリテラシーのなかで、給与が大きく関係するのは「収入」に関してです。

将来のライフイベントの準備も含めてお金の計画を立てるためには、自分の収入についてトコトン考える必要があります。

私の経験では、ほとんどの社員さんは「もっと給料が多かったらいいなぁ」というような漠然とした希望は持っていても、自分の給与額について具体的な説明はできません。

自己申告型給与制度を導入していただくと、一人ひとりの社員さんに自分の貢献に見合った給与額を申告してもらうことになるのですが、多くの社員さんは「そんなの分からない」とおっしゃいます。

ご自分でも分からないなら、会社がどんな決定をしてもその額が適切かどうかは分からないはずです。

もし給与について不満を持っているのなら、自分でも適切かどうか分からないことに対して不満を持っているということになります。

給与額を会社が決定するという従来型の人事制度では根本的な解決にならない、と私が考えるのはまさにここなのです。

自分の給与額を自己申告することになれば、おのずと給与について真剣に考えるようになります。

そうすると、自分と同じ職種の求人でどれぐらいの給与が提示されているかの情報を調べるようになったり、自分の生産性がどれぐらい向上しているのかを考えるようになります。

自分の給与決定を会社任せにするのではなく、自分で考えるようになるのです。

そして、収入をもっと高める必要があるのならば、自分にどんな成長が必要なのかを考えることになります。

つまり、自分の人生とキャリアについて考えることになります。

そういう問題意識が高くなれば、お金のリテラシーも自然と高まっていきますから、自分の人生設計がより具体的にできるようになります。

ですので、社員さんがお金のリテラシーを持つことは、自己申告型給与制度の条件でもあり、導入による効果にもなります。

お金のリテラシーを持ったうえで、かつ自分の給与額について自己申告できる場があることは、給与への満足につながりますし、仕事を通した生きがいにもつながります。

私が自己申告型給与制度を提唱しているのは、社員さんが自律的に人生やキャリアの設計をすることで、生きがいが高まると考えているからです。

※生きがいラボブログ「給与制度が自律分散型になるには「お金のリテラシー」が必要不可欠です!」より引用