人事制度の未来を語る

日本の未来を明るくするために、人事制度コンサルタントである私に何ができるかを探求したいと思います。

給与制度を自律分散型に変革する条件を解説します!

給与制度をティール組織のような自律分散型にしようと思うと、一人ひとりのお金に対する価値観も変わっていく必要があります。


お金に対する価値観について、私の考えをブログに書きました。


私としては、自己申告型給与制度を始めた大きな理由になりますので、たくさんの方々と一緒に探求したいテーマでもあります。

 

組織運営の新しい考え方として、ティール組織に代表される「自律分散型組織」が注目されています。
 
変化が激しく多様性に富む社会のなかでは、中央集権的な組織運営では対応できないことが多く、一人ひとりが自分で考えて活動する必要性が高まっていることが背景にあります。
 
社会の変化から必要性とともに、自律分散型組織の方が組織メンバーの「生きがい」が高まると考えていますので、人事制度を自律分散型にすることを長年考えてきました。
 
そして結論として、人事制度をティール(自律分散型)にすると「給与を自己申告する」という取り組みに至りました。
 
今回のブログも、前々回・前回から引き続いて、給与を自己申告にするための3つの条件について解説します。
 
 
■お金に束縛される価値から解放される
 
給与を自己申告にするための3つの条件は、下記のとおりです。
 
1.組織の業績情報や、部門やチームごとの生産性などの情報がオープンになっている
2.すべての社員さんの給与が公開されている
3.社員さんがお金に対するポジティブな価値観とリテラシーを持っている
 
今回は3つ目を解説していきます。
 
給与を自己申告にするためには、社員さんの給与情報がオープンになっている必要があるという2番目の条件について解説しました。
 
このことに、多少なりとも抵抗感を持つ人は多いのではないでしょうか?
 
この抵抗感がどこから生まれるのかを見つめなおすことが大切だと思います。
 
給与の自己申告に取り組むことは、お金に対する価値観を見つめなおすことにもつながり、お金に対する価値観が変わることで、この社会はより「生きやすく」なります。
 
どのようにお金に対する価値観を変えた方がよいのか、私の意見を述べていきます。
 
給与に関して多くの人が持っている価値観は、「給与額が高い人の方が人間として価値が高い」という感覚です。
 
この価値観を持っていれば、自分の給与が下がることは自分の人間としての価値が下がったと感じてしまいますし、自分より給与が多い人に対して劣等感を抱いたりしてしまいます。
 
「給与額」とその人の人間としての「価値」にはまったく相関関係がない、と私は考えています。
 
そもそも人間としての価値は、数値に置き換えて比較できるようなものではありません。
 
もっと現実的な視点で言えば、同じ業務をしていても、業界や地域、企業規模によって給与額には違いが出てきます。
 
たとえば、同じ受付業務をしている人でも金融機関で働いていれば給与額が高かったり、大企業では高い給与額になったりするわけです。
 
給与というのは、お金が生まれる(=流れる)場所に近い仕事ほど、相対的に高くなる傾向があるからです。
 
また、給与の相場と、その仕事の社会的意義にも関係性はありません。
 
介護などの社会福祉に携わる方々の給与は低い傾向にありますが、社会にとってなくてはならないお仕事です。
 
そのような傾向があることが、望ましいことだと言っているわけではなく、これは社会全体として考えていかなければならない問題です。
 
ここでは、一般的に給与相場にはそのような傾向があるということだけ、お伝えしています。
 
つまり何が伝えたいかというと、自分の給与額によって劣等感を感じたり、あるいは優越感を感じる必要は、まったくないということです。
 
 
■お金に対する価値観を内省する機会をつくる
 
お金に対するポジティブな価値観を社員さんが身につけることが、給与の自己申告に取り組む条件だとお伝えしましたが、自己申告型給与制度をご導入いただいている当社のお客さまの会社の社員さん全員が、そのような価値観を持っているわけではありません。
 
逆に、制度をスタートする時には、ほとんどの社員さんが持っていませんので、当社のお客さまでも給与情報をオープンにしている会社はほとんどありません。
 
しかし、この自己申告型給与制度をスタートすることで、ご自分の仕事や人生にとって「給与とはなんなのか?」について、深く考える機会になります。
 
そのことが、とても意味のあることだと思います。
 
今までは給与額を決めるのは会社で、決められた給与額になんとなく不満を持っていた社員さんも、自分で給与額を考えることになると、お金に対してより深く考えることになります。
 
いくら資産形成や資産運用の知識があったとしても、給与を自分以外の誰かが決めているという構造では、現実感が湧かないのです。
 
自分の人生と仕事、そしてお金のことについてより深く考える機会をつくるという意味でも、自己申告型給与制度は取り組み意義があると思っています。
 
3番目の条件の「お金に対するリテラシー」については、次回に解説したいと思います。

※生きがいラボブログ「給与制度を自律分散型に変革する条件を解説します!