人事制度の未来を語る

日本の未来を明るくするために、人事制度コンサルタントである私に何ができるかを探求したいと思います。

給与制度を自律分散型に変革する条件を解説します!

給与制度をティール組織のような自律分散型にしようと思うと、一人ひとりのお金に対する価値観も変わっていく必要があります。


お金に対する価値観について、私の考えをブログに書きました。


私としては、自己申告型給与制度を始めた大きな理由になりますので、たくさんの方々と一緒に探求したいテーマでもあります。

 

組織運営の新しい考え方として、ティール組織に代表される「自律分散型組織」が注目されています。
 
変化が激しく多様性に富む社会のなかでは、中央集権的な組織運営では対応できないことが多く、一人ひとりが自分で考えて活動する必要性が高まっていることが背景にあります。
 
社会の変化から必要性とともに、自律分散型組織の方が組織メンバーの「生きがい」が高まると考えていますので、人事制度を自律分散型にすることを長年考えてきました。
 
そして結論として、人事制度をティール(自律分散型)にすると「給与を自己申告する」という取り組みに至りました。
 
今回のブログも、前々回・前回から引き続いて、給与を自己申告にするための3つの条件について解説します。
 
 
■お金に束縛される価値から解放される
 
給与を自己申告にするための3つの条件は、下記のとおりです。
 
1.組織の業績情報や、部門やチームごとの生産性などの情報がオープンになっている
2.すべての社員さんの給与が公開されている
3.社員さんがお金に対するポジティブな価値観とリテラシーを持っている
 
今回は3つ目を解説していきます。
 
給与を自己申告にするためには、社員さんの給与情報がオープンになっている必要があるという2番目の条件について解説しました。
 
このことに、多少なりとも抵抗感を持つ人は多いのではないでしょうか?
 
この抵抗感がどこから生まれるのかを見つめなおすことが大切だと思います。
 
給与の自己申告に取り組むことは、お金に対する価値観を見つめなおすことにもつながり、お金に対する価値観が変わることで、この社会はより「生きやすく」なります。
 
どのようにお金に対する価値観を変えた方がよいのか、私の意見を述べていきます。
 
給与に関して多くの人が持っている価値観は、「給与額が高い人の方が人間として価値が高い」という感覚です。
 
この価値観を持っていれば、自分の給与が下がることは自分の人間としての価値が下がったと感じてしまいますし、自分より給与が多い人に対して劣等感を抱いたりしてしまいます。
 
「給与額」とその人の人間としての「価値」にはまったく相関関係がない、と私は考えています。
 
そもそも人間としての価値は、数値に置き換えて比較できるようなものではありません。
 
もっと現実的な視点で言えば、同じ業務をしていても、業界や地域、企業規模によって給与額には違いが出てきます。
 
たとえば、同じ受付業務をしている人でも金融機関で働いていれば給与額が高かったり、大企業では高い給与額になったりするわけです。
 
給与というのは、お金が生まれる(=流れる)場所に近い仕事ほど、相対的に高くなる傾向があるからです。
 
また、給与の相場と、その仕事の社会的意義にも関係性はありません。
 
介護などの社会福祉に携わる方々の給与は低い傾向にありますが、社会にとってなくてはならないお仕事です。
 
そのような傾向があることが、望ましいことだと言っているわけではなく、これは社会全体として考えていかなければならない問題です。
 
ここでは、一般的に給与相場にはそのような傾向があるということだけ、お伝えしています。
 
つまり何が伝えたいかというと、自分の給与額によって劣等感を感じたり、あるいは優越感を感じる必要は、まったくないということです。
 
 
■お金に対する価値観を内省する機会をつくる
 
お金に対するポジティブな価値観を社員さんが身につけることが、給与の自己申告に取り組む条件だとお伝えしましたが、自己申告型給与制度をご導入いただいている当社のお客さまの会社の社員さん全員が、そのような価値観を持っているわけではありません。
 
逆に、制度をスタートする時には、ほとんどの社員さんが持っていませんので、当社のお客さまでも給与情報をオープンにしている会社はほとんどありません。
 
しかし、この自己申告型給与制度をスタートすることで、ご自分の仕事や人生にとって「給与とはなんなのか?」について、深く考える機会になります。
 
そのことが、とても意味のあることだと思います。
 
今までは給与額を決めるのは会社で、決められた給与額になんとなく不満を持っていた社員さんも、自分で給与額を考えることになると、お金に対してより深く考えることになります。
 
いくら資産形成や資産運用の知識があったとしても、給与を自分以外の誰かが決めているという構造では、現実感が湧かないのです。
 
自分の人生と仕事、そしてお金のことについてより深く考える機会をつくるという意味でも、自己申告型給与制度は取り組み意義があると思っています。
 
3番目の条件の「お金に対するリテラシー」については、次回に解説したいと思います。

※生きがいラボブログ「給与制度を自律分散型に変革する条件を解説します!

ティール組織の視点で人事制度を変革する条件を解説します

ティール組織については、私もまだまだ勉強中で語れるほどではないのですが、ティール組織に代表される自律分散型組織に進化していくうえで、人事制度(特に給与制度)は大きな課題になると思います。


自律分散型で組織運営するときに人事制度がどう変わるのかを解説しました。

 

前回のブログでは、ティール組織に代表される「自律分散型組織」の考え方を人事制度に当てはめると、
 
「給与額を社員さんご本人が決める」
 
という構造になるとお伝えしました。
 
そして、社員さん一人ひとりがご自分の給与額を決めるには、3つの条件が必要だとお伝えしました。
 
1.組織の業績情報や、部門やチームごとの生産性などの情報がオープンになっている
2.すべての社員さんの給与が公開されている
3.社員さんがお金に対するポジティブな価値観とリテラシーを持っている
 
今回は2つ目を解説していきます。
 
 
■給与額に正解はない
 
人事制度が、社員さん自身がご自分の給与額を決める仕組みになったときに、社員さんが最も困ることになるのは、「自分にとって妥当な給与額が分からない」ということです。
 
このことは、人事制度の永遠のテーマであり、人事制度設計に関わったことのある人でしたら、頭を悩ませた経験があると思います。
 
本当に難しいテーマで、私も長年にわたってさまざまな取り組みをしてきましたが、現在の私の結論は「給与額に正解などない」という考えです。
 
同一労働同一賃金という考え方があり、これは理にかなった考え方だと思いますが、実際に実現するのはとても困難です。
 
なぜなら、まったく同じ貢献をしている人などいないからです。
 
同じ職務でもレベルの差がありますし、人事制度に盛り込めない貢献もあります。
 
社員さんが給与額を自分で考えると、給与額を決める難しさに直面することになります。
 
見方を変えてみると、一般的な人事制度は、社員さんご本人でもよく分からない給与額を会社が決めようとしているわけですから、根本的に満足を生み出す構造ではないということです。
 
しかし、多くの経営者さんは、一人ひとりの社員さんに対して、妥当だと感じる給与額を持っているものです。
 
それはなぜかというと、全社員さんの給与情報を知っているからです。
 
 
■意思決定には情報が必要となる
 
難しいテーマについて結論を出すためには、情報が必要となります。
 
したがって、社員さんがご自分に妥当な給与額を考えるときには、自分以外の給与情報が必要になります。
 
給与情報がオープンになっているからこそ、社員さん一人ひとりが自分の給与額が妥当なのかを判断できるようになります。
 
かつ、給与情報をオープンにすると、自動的に給与額が修正されるメカニズムが生まれます。
 
これはティール組織の考え方では「自己修正」と呼ばれますが、他者の給与額を知り、自分の給与額を他者も知っているという状況がつくられることによって、給与額をコントロールする存在がいなくても妥当な給与額への修正されていくのです。
 
このメカニズムを補助するために、「助言プロセス」を採用することも有効です。
 
助言プロセスとは、何かの意思決定をするときには、必ず関係者と専門家に助言を求めなければならないという仕組みです。
 
その助言をどう活用するかは意思決定する人の判断になります。
 
助言を受け入れて自分の意思決定を修正してもいいですし、助言を無視することもできます。
 
助言プロセスには強制力はありませんが、人は自分の責任において意思決定するときには、他者の助言に真摯に耳を傾けるものです。
 
自律分散型の組織運営をするときに、給与決定だけ中央集権型というのは、やはり違和感が残ります。
 
情報をオープンにすることで、社員さんがご自分の給与額を意思決定できるようになります。
 
しかし一方で、給与情報をオープンにすることは、かなりハードルが高いことだと認識しており、私のお客さまでも給与情報をオープンにしているのはごく少数です。
 
現在のところ、ほとんどのお客さまでは、完全に自律分散型の給与決定に向かうプロセスとして、全社員さんの給与情報を把握する人を増やし、その人たちが社員さん一人ひとりに対してアドバイスを行ったり、意思決定をサポートするという方法をとっています。
 
この取り組みは、社員さん一人ひとりのお金に対する価値観とリテラシーが醸成されるまでのステップと考えているのですが、
 
給与決定を自律分散型にするには、社員さんのお金に対する価値観とリテラシーが必要不可欠だと考えているからです。
 
この点については、次回のブログで解説します。

※生きがいラボラボブログ「ティール組織の視点で人事制度を変革する条件を解説します」より引用

ティール組織の視点で人事制度の未来像を考える

管理や統制を強化する組織運営よりも、ティール組織に代表される自律分散型の組織運営の方が、生きがいを感じる社会づくりにつながると私は思っています。


人事制度を自律分散型にすると、どのような制度になるのかを解説していきます。

 

私は、企業の活性化のためだけにサポートを行っているわけではありません。

私がつくりたい「社会」を実現するために、「人事制度」という自分の専門分野において新しい「組織と個人の関係性」を提案しています。

私がつくりたい「社会」とは、一人ひとりが生きがいを感じている社会であり、私がつくりたい「組織と個人の関係性」とは、役割の違いを超えて、すべての人が対等なパートナーであるということです。

巷にあふれている「管理強化」の組織運営では、私のつくりたい社会からは遠ざかっていくように感じており、ティール組織に代表される「自律分散」の組織運営の方が適しているように感じています。
 

■自律分散型組織とはどんなモノか?

自律分散型組織は、非常に奥が深い考え方で簡単に説明するのは難しいのですが、人事制度に関わる側面で重要な要素は、

「一人ひとりの意思決定が尊重される」

ということです。

従来の組織のように誰かの指示命令に従わなければという構造ではなく、「自分のことを決定するのは自分自身」という考え方が当然のようになっている組織運営です。

ですので、厳密にいうと「権限移譲」によって裁量を持っている状態とも違います。

ティール組織の比喩として生命体や自然界が使われますが、自然界においては、誰か統制する存在がいて、他がその指示に従っているわけではありません。

自然界では、それぞれが環境の変化をとらえ、自分を適応させていっているわけです。

私がティール組織に代表される自律分散型組織に魅力を感じるのは、自律分散型の組織運営の方が「生きがい」が高まると思うからです。

誰かに強制されて動かされるのではなく、自分で考えて自分で決め、そして行動する方が生きがいが高まると考えています。

 
■人事制度が自律分散型になるとどうなるのか?
 
では、人事制度が自律分散型になるとどうなるのかを解説したいと思います。

一般的な人事制度の最大の問題点は、ご本人の知らないところで評価や給与が決まっているという構造です。

形式上は、人事評価面談ということで人事評価についてご本人の意見を聞いたり、上司の考えを伝えたりするわけですが、最終決定に関してはご本人は結果を聞くだけです。

要は、一般的な人事制度は、中央集権型だということです。

人事制度を「自律分散型」にしようとすると、究極的には、給与を含めたすべてをご本人に決めてもらうということになります。

給与が、何かしらの仕組みによってご本人の知らないところで決まるという構造ではなく、ご本人が給与額を決めるということになります。

しかし、これを実現するためには、最低でも3つの前提があると思っています。

1.組織の業績情報や、部門やチームごとの生産性などの情報がオープンになっている
2.すべての社員さんの給与が公開されている
3.社員さんがお金に対するポジティブな価値観とリテラシーを持っている

1つ目の前提は、経営情報がオープンになっているということです。

当たり前のことですが、社員さんご本人が給与を決めるためには、自分が働いている企業やチームの業績情報が必要不可欠です。

それらの業績情報がなければ、社員さんは自分の給与を増やしてよいのか、減らすべきなのかの判断が付きません。

当然ながら、これらの情報を適切に読み解くには、ある程度の知識が必要になりますので、その知識習得も進めていく必要があります。

2つ目以降の前提については、次回の記事で解説したいと思います。

※生きがいラボブログ「ティール組織の視点で人事制度の未来像を考える」より引用

成果主義人事制度が失敗した3つの理由

私が人事制度のコンサルティングを始めた当時は、「成果主義人事制度を導入して悪くなった社風を元に戻したい」というご要望をよくいただきました。
 
日本ではバルブ崩壊後に成果主義人事制度の導入が進み、その大半が失敗したことで、「日本に成果主義は合わない」という認識が定着しました。
 
成果主義人事制度が失敗した理由について、私の考えを書きました。

 

私が人事制度のコンサルティングを始めた当時は、「成果主義人事制度を導入してめちゃくちゃになった社風を元に戻したい」というご要望をよくいただきました。

その当時の経験があって、成果主義人事制度に対してはあまりよい印象を持っていません。

しかし、仕事においては「成果」というものはとても大切で、「必要とされない」「役に立たない」ような仕事を長く続けていくことはできません。

ここで切り分けなければならないのは、「成果主義」と「成果主義人事制度」の違いです。

仕事において「成果主義」という考え方は、とても大切だと思います。

「成果」を「誰かの役に立つこと」と位置づけると、仕事において「誰かの役に立っていること」というのは、とても大切です。

しかし、「成果」を何かしらの方法で測定して、人事評価や給与決定の根拠にする「成果主義人事制度」というシステムにしようとすると、いろいろ無理が出てくると思っています。

仕事において大切な「成果」を重視するという意味で、とても理にかなっていると思われる「成果主義人事制度」がなぜうまく機能しなかったのか、その大きな理由を3つ解説していきます。

 
■「何を成果とするのか」が難しい
 
1つ目は、成果の定義が難しいということです。

何度も申し上げますが、仕事において成果をつくる、つまり誰かの役に立つということはとても大切なことです。

しかし、成果主義人事制度というシステムにしようと思うと、「何が成果なのか?」を具体化しなければなりません。

この最も簡単な方法は、数値にできる「貢献」だけを「成果」と位置づけることです。

しかし、数値にできることだけが成果ではありませんので、この段階で数値化できない社員さんの貢献が無視されることになります。

そうするとその弊害として、社員さんは自分のことしか考えなくなるのですが、それは社員さんからすると合理的な判断であり、問題はシステムにあるのです。

 
■「成果の個人への紐づけ」が難しい
 
2つ目は、成果を個人に紐づけることが難しいということです。

ほとんどの会社では、仕事は複数の社員さんの協業によって進んでいきます。

たとえば、売上があがったとしても、それは「特定の誰か一人」の成果ではなく、複数の社員さんの仕事のおかげということがほとんどです。

会社に大きなインパクトを与える成果ほど、多くの社員さんが関わっています。

それを誰かの成果として特定することは、不可能と言えるでしょう。

その対応策として、部署やチームごとに按分するルールをつくっている会社もありますが、実際にはそのルールが社員さんの不満のタネになっています。

実態に沿っていないことが多いのです。

また、社員さんの成果が、その社員さんの頑張りによるものなのかも、判断が難しいところです。

たとえば、ある店舗は立地が良くて、誰でも成果があがるということも実際にはあります。

このように、成果を個人に紐づけるのはとても難しいのです。

 
■給与の乱高下が発生してしまう
 
3つ目は、社員さんの給与が乱高下するリスクがあるということです。

実際に成果主義人事制度を導入したとして、成果をあげた社員さんの給与をグンと上げたとすれば、その社員さんが次の期に成果をつくれなかったら、給与をグンと下げなければなりません。

成果主義人事制度のコンセプトを厳密に当てはめるとそうなりますが、それが社員さんのためになるでしょうか?

私はならないと思います。

成果主義人事制度を導入した方からお話を聞いて意外だったのは、高業績者も疲弊していたことです。

いくら優秀な人でも、すべての取り組みを成功させることは至難の業で、多少の波は起こります。

高いレベルの成果をつくり続けなければ給与が下がるので、給与を維持していくプレッシャーで疲れ切っておられました。

また、1番目と2番目の理由にもあった通り、給与の根拠となる一人ひとりの成果の妥当性にも問題がありますので、そんな妥当性に乏しい根拠で給与が乱高下すれば、受け入れられるものではありません。

 
■「ノーレイティング=脱成果主義」という誤解
 
成果主義人事制度が失敗した」という認識が定着してからノーレイティングという新しい人事制度が出てきたので、

ノーレイティングは成果主義ではない

と捉えている人もいらっしゃいますが、これは誤解です。

ノーレイティングを導入している企業が多いアメリカでも、ノーレイティングを導入した企業が人事ポリシーとして「Pay for Performance(=成果主義)」を上げている企業も多いです。

私も、仕事において成果は大切だと思います。

しかし、成果主義という考え方を、従来の人事制度のフレームワークで実現しようとすると、システムとして無理が生じてきます。

そこで、従来のフレームワークを捨てて、もっと具体的にいうと点数づけやランクづけを廃止した、新しい人事制度のフレームワークとして登場したのがノーレイティングなのです。

生きがいラボブログ「成果主義人事制度が失敗した3つの理由」より引用

人事制度の定説「終身雇用と年功序列は時代遅れ」は本当でしょうか?

ジョブ型雇用への転換が叫ばれ、終身雇用や年功序列のイメージがあるメンバーシップ型雇用は時代遅れだとされる主張が多いと思います。


人事制度の世界での定説となっている「終身雇用と年功序列は時代遅れ」ということを、違う視点が考えてみました。

 

「人的資本」や「ジョブ型」などのキーワードが、人事関連のトレンドとして注目されています。

その一方で、「終身雇用」や「年功序列」に代表される日本的経営や、あるいは日本的経営を否定する考え方として導入された「成果主義」などは、もはや「時代遅れ」だということが定説になっているかと思います。

経営手法においては、ある手法がうまくいかなくなると別の手法が注目され、前の手法が「害悪」であるかのように喧伝されて、「〇〇は時代遅れ」というステレオタイプの認識が広がっていく傾向があります。

私も、時代の変化とともに従来の手法が「機能しなくなることが多い」という感覚はありますが、新しい手法を特効薬のようにもてはやすことにも違和感があります。

今回は「終身雇用」と「年功序列」という、時代遅れの代名詞になっている手法について、考えてみたいと思います。

 
■日本的経営の特徴
 
日本的経営の特徴として「メンバーシップ型雇用」があり、それを実現させていた三本柱として「終身雇用」「年功序列」「企業内労働組合」が挙げられます。

日本的経営を簡単に表現すると、高い経済成長率を背景に、一つの企業に長く勤める方がメリットの大きい人事施策(=終身雇用×年功序列)によって、企業独自の競争力を構築することを目指した経営です。

実際に、経済成長率が高い時代では有効に機能しました。

しかし、高い経済成長率の時代が終わると、日本的経営が有効に機能しなくなり、成果主義などの考え方が日本的経営を否定するカタチで登場しました。

そして、成果主義を導入した企業がその運用に軒並み失敗したことで、「成果主義は日本には合わない」という認識が広がり、現在は「ジョブ型雇用」や「人的資本」などがトレンドになっています。

 
■終身雇用や年功序列は時代遅れなのか?
 
今日の主題に話を進めますが、結論とすれば、時代遅れとかそういう次元の話ではなく、それぞれの組織が目指している方向性に基づいて、終身雇用や年功序列を「選択」するならば、それは素晴らしい選択なのだと思っています。

なぜなら、終身雇用や年功序列にも一定の合理性があるからです。

いつ解雇になるかも分からない会社で働くのは、やはり不安が大きくて自分らしく働けないでしょうし、よい仕事もできないでしょう。

その一方で、ルールを守って真面目に働いていれば、いつまでも働けるという会社であれば、安心して自分の能力を発揮できるはずです。

これが終身雇用のメリットだと思います。

また、会社のなかで自分の能力を高めることができる環境が整っていて、その結果として先輩社員の方が後輩社員よりも知識やスキルが高く、それに伴って給与額も先輩社員の方が高いという状態であれば、年功序列もデメリットとしては機能しません。

そして、そのことは終身雇用との良い相乗効果を生みます。

これらのことが、終身雇用や年功序列が持っている合理性です。

かつての日本企業における終身雇用と年功序列が機能しなくなったのは、何が何でも年功序列になるように「制度化」してしまったことです。

加えて、解雇権濫用法理によって、会社側に終身雇用が強制されてしまったことも理由として挙げられます。

つまりは、終身雇用や年功序列という考え方に問題があったというよりは、それを運用するための技術面(=制度)に問題があったということです。

ここまで理解したうえで終身雇用や年功序列は「自社の目指す方向性ではない」と考えるのか、あるいは「終身雇用や年功序列は時代遅れだ」と言われているから何となく否定するのかでは、大きな違いがあると思います。

後者のように、何となく流行りの経営手法に飛びついたのでは、何をやってもうまく行かないように感じます。

特に、人事制度は人に関する取り組みですから、流行りの経営手法に飛びつくのではなく、人間の本質に立脚するべきだと思っています。

当然ながら、私が取り組んでいる自己申告型給与制度は、人間の本質に立脚していると考えています。

生きがいラボブログより引用

部下が納得する人事評価をするのは管理職の責任なのか?

部下が納得する人事評価をするのが管理職の責任だ!と多くの人が思っておられると思います。

たしかにそういう「常識」があると思いますが、その常識について違う視点が考えてみました。 

 

一般的に言われている「管理職の役割」について、私は違和感を持っています。
 
その違和感とは、下記の2つです。
 
1.管理職に多くを求めすぎている
2.外部からの刺激がなければ人は怠けるという人間観に基づいている
 
前回は、1番目の「管理職に多くを求めすぎている」ということについて、本来は管理職の役割ではないことまで抱えこんでしまっているとお伝えしました。
 
今回はそのことについて、人事制度の視点から私の考えを共有したいと思います。
 
 
■「上司は部下のことの把握しておくべき」という常識を疑う
 
人事制度においては、管理職は部下が納得する人事評価をしなければならないという「常識」があります。
 
当たり前すぎて、この常識を疑ったことがない人も多いと思います。
 
部下が納得する人事評価を行うために、上司は部下の仕事ぶりをしっかり把握しておく必要があるということに派生するのですが、
 
たしかに適切に業務をアサインするためには、部下の仕事を把握しておく必要があるでしょう。
 
しかし、管理職がその責任をすべて負っているという感覚は、少し違うと思います。
 
一人の管理職さんには複数の部下がいる場合が多いと思いますが、そのような状況で部下一人ひとりのことを深いレベルで把握することはかなり困難です。
 
現代の仕事は、昔のような単純作業ではないのです。
 
私の考えは、自分が何をしているのかを上司に理解してもらうのは、一人ひとりの社員さんの役割だと考えています。
 
つまり、部下にも説明責任があるということです。
 
 
■上司と部下が協力して適切な人事評価を探求する
 
ちなみに私は、組織のなかには役割の違いがあるだけで上下関係はないと考えていますので、「上司」「部下」という上下関係を連想させる言葉が好きではないのですが、一般的な人事制度をテーマにしていますので上司・部下という言葉を使っています。
 
話を戻しますと、部下の方にも説明責任があるという視点で人事評価について改めて眺めてみると、
 
部下が納得できる人事評価をするのは管理職の責任だという常識も崩れていきます。
 
もしある社員さんが、自分に対する上司の人事評価に納得ができないのであれば、上司が適切な人事評価をできるように、部下の方から自分の成果や行動についての説明をしなければなりません。
 
そして上司の方は、部下の説明にしっかりと耳を傾け、自分の評価に誤りがないかを素直に振り返って、必要があれば評価に修正を加えなければなりません。
 
つまり、上司と部下が協力して適切な人事評価を探求することで、その結果としてお互いの納得度が高まるのです。

 

生きがいラボブログより引用

1on1が成功するポイントを解説します

人事評価を行わない人事制度であるノーレイティングでは、人事評価面談は必要なくなります。

その代わりに、部下の成長をサポートするための1on1が大切な役割を持ちます。

ノーレイティングにおける1on1について解説しました。 

 

【1on1が成功するポイントを解説します】

人事評価を行わないノーレイティングという人事制度では、1on1がとても大切な施策になります。

今回は1on1を成功に導くポイントについてお伝えします。

 
■1on1の目的

「成功」というあいまいな言葉を使いましたが、1on1における成功とは何かをまず定義しておきたいと思います。

どんな施策も目的がありますが、1on1の成功とは「目的が達成されること」です。

1on1の目的は、それぞれの組織の課題によって多少は違ってくるとは思いますが、共通するところでは下記の2点になると思います。

・部下のモチベーションが高まる
・部下のパフォーマンスが向上する

1on1を定期的に実施することで、部下のやる気が高まり、仕事上の目標達成や生産性の向上が実現することを、ここでは1on1の成功と位置づけたいと思います。

 
■1on1が成功するポイント
 
前回の記事でお伝えしましたが、「心理的安全性が高まる」ことが1on1の大きなメリットです。

心理的安全性が高まると、失敗を恐れずに高い目標にチャレンジできるようになったり、新しい取り組みをスタートできるようになったり、うまくいかなかったことを学習の糧に活用できるようになったりします。

それが一人ひとりの成長につながり、パフォーマンスの向上をもたらします。

心理的安全性が高まる1on1のポイントとしては、以下のようなことが挙げられます。

・上司が、「自分も正解を持っているわけではない」ということを率直に伝えている。
・上司が、部下の失敗を責めることなく、学習のプロセスと捉えている。
・上司が、自分と違う意見を尊重する姿勢を示している。
・上司が、部下からの率直な意見(苦言も含めて)を歓迎する姿勢を示している。
・上司が、部下に対して上司自身の考えを率直に伝えている。

要は、大切なのはテクニックではなく、上司としての「あり方」が大切になります。

上記のような心の「あり方」が、上司と部下の間に信頼関係を築いていきます。

 

生きがいラボブログから引用