人事制度の未来を語る

日本の未来を明るくするために、人事制度コンサルタントである私に何ができるかを探求したいと思います。

給与制度への私の思い

出張先のホテルで一人無言で恵方巻を食べ終え、まったりとしています。
まったりついでの投稿なので、たぶん長くなります。
私の取り組みの根っこにあるのは「他者との比較からは本当の幸せは生まれない」という思いです。
私にはずっと「自分には価値がない」という思い込みがありましたが、それも他者との比較によって強化されてきました。
※原体験は他者との比較ではないのですが話が長くなりそうなので割愛します。
自分より優れた他者の特徴を見て、劣等感を感じてきたわけです。
それとは反対に、自分が少しでも優れているような部分があると優越感を感じるわけですが、それも本当の幸せとは到底呼べるものではありません。
こういう自分の体験を通して、本当の幸せ(生きがい)を得ようとすれば、他者との比較によって自分の幸福度を測るという思考様式から解放される必要があると思ってきました。
私の専門領域である人事制度の世界で、他者との比較が生まれやすいのが「給与額」です。
仮に、ご自分の給与額に不満を持っている人がいるとします。
その不満を解消しようと、人事制度の世界では悪戦苦闘しているわけです。
人事評価の項目や方法を変えたり、人事評価者のトレーニングをしたり、いろいろ取り組んでいるわけですが、その人の思考様式が他者との比較によって自分の幸福度を測るというものである限り、何をやっても無意味だと私は思っています。
2010年に生きがいラボを立ち上げた当初は、給与の決め方をいくら工夫しても意味がないという考えから、社員さんが給与のことを考えなくてもよい制度を目指していました。
もう少し具体的にいうと、役割に応じて外部労働市場の相場以上の給与額になるように、毎年自動昇給する仕組みにしていました。
その代わりに、キャリア開発を会社として厚く支援することで、「給与のことは気にせずに自分を成長させることに集中してほしい」というメッセージを送ったわけです。
この取り組みは、ある程度は理にかなった方法だと思っていましたし、それなりに効果もあったと思います。
でも私のなかでは、これでは根本的な解決には至らない感覚が出てきました。
「お金」というものがこの世に存在する限り、この方法は、臭いものに蓋をして問題を先送りにしているだけだと感じてきたのです。
つまり、この方法では「自分の幸せを他者との比較によって測る」という思考様式には変化が起きないと感じたわけです。
だったら、「給与額」というテーマを、会社と社員さんの話し合いのテーブルのど真ん中に「ドン!」と置くしかないと考えました。
しかし、これは経営者さんにとっても、社員さんにとっても、そして私にとってもかなり勇気が求められることでした。
お金の話は感情が動きやすいので、できれば避けたいものです。
でも、うまくいくか分からないけど「やるしかない」と思って、給与をご本人に自己申告してもらうという取り組みを始めました。
取り組み始めてから10年近く経って、確信できるようになったことがあります。
それは、「給与額はその人の人間としての価値とは何の関係もない」ということです。
はっきり言って給与なんてものは、その人の活動の中の経済的価値に置き換えられる一部分だけ取り出して恣意的に決められるものですので、その額になんの意味もありません。
意味もないし、ましてや正解もありません。
給与額には正解があるようなことを強調する広告も見受けられますが、そんなものは幻想です。
正解がないから、当事者本人が話し合いのテーブルに座って、対話を通してとことん探求していくことが必要なのです。
ご自分の給与額を決める対話を通して、「自分の人生にとってお金とはどんな意味があるのか?」を探求し、自分の仕事への情熱やスキル、仕事とプライベートとの比重、自分らしいライフスタイルなどを模索していくことで、他者と比べる必要のない人生を歩んでもらいたいという思いがあります。
それが本当の幸せ、生きがいにつながると思って、今の取り組みをやっています。
夜中に文章を書くと長くなりますね。乱文乱筆お許しください。おやすみなさい。

今年もありがとうございました!

今日が仕事納めの会社さんも多いと思いますが、当社も本日が仕事納めです。
今年も1年間お世話になりまして、誠にありがとうございました。
年末になると毎年思うのですが、今年もたくさんの方々に支えていただいて、本当にありがたい一年だったと思います。
社員さんが給与額を自己申告する人事制度というのは、かなりイノベーティブな取り組みだと思いますので、共感や協力をいただける方々の存在は本当にありがたいです。
当社にお問い合わせいただく方々は、ティール組織や自律分散型組織、ノーレイティングなどにご興味のある方がほとんどなのですが、私が自己申告型給与制度に取り組み始めた当初は、ティール組織はまだ日本語訳されていなくて、ノーレイティングも日本に紹介されていませんでした。
そのような時代では、ノーレイティングや自己申告型給与制度のことをご理解いただくのは、なかなか大変だったのですが、今ではコンセプトを少しお話するだけで「それおもしろい!」と言ってくださる方が増えてきました。
アーリーアダプターの段階に近づいてきたのかな?と思っています。
ただ私の感覚としては、人事業界に革新を起こしたいとか思ってやり始めたわけではなくて、私のテーマである「人間の生きがい」を探求してきた結果ですので、その姿勢は崩さずに来年も頑張っていきたいと思います。
来年もいろいろ情報交換、意見交換させていただければ嬉しいです。よろしくお願い申し上げます。

困窮する若者のSOSを逃さない

いつも応援しているD×Pさんのクラウドファンディングをシェアします。

D×Pさんがされている定時制高校の授業にボランティアで参加させていただいたことがありますが、私の予想以上に厳しい状況に置かれている若者の実態にショックを受けました。

私は人事制度のコンセプトのなかで「自律」、つまり「自己責任」の大切さを主張していますが、現実的には、自分の努力でどうにもならない状況に置かれている方々がいらっしゃいます。

特に、子どもにとっての家庭環境は、自分の力ではどうにもならないことですので、社会全体でサポートしていかなければならないと思います。

私も微力ですがこのクラファンに参加させていただきました。

 

readyfor.jp

【導入事例】コンピュータ技研さまにヒアリングしました!

自己申告型給与制度をご導入いただいたコンピュータ技研・代表取締役の松井さんに、ご導入を決めた理由やご導入後の変化についてヒアリングしました!
ぜひお読みください!

ご感想などもいただけると、最高に嬉しいです!

ikigai-lab.jp

ノーレイティングのメリットは?(2)【自分自身の経験から解説します】

ノーレイティングのメリットについて、設計や運用のお手伝いをしてきた経験と通して感じていることをブログに書きました。

 

ノーレイティングのメリットは、人事制度を設計・運用する労力が劇的に軽減されることです。

前回は、このようにお伝えしました。

実は、ノーレイティングのさまざまな効果は、労力が削減できることから発生しますので、今回はその辺を解説したいと思います。


■ノーレイティングのメリット
 
ノーレイティングのメリットとしては、下記のことが挙げられます。

・上司と部下のコミュニケーションが増え、部下のモチベーションが高まる。
・上司に対する信頼感が高まり、処遇への納得感が高まる。
・環境変化に対応し、柔軟に目標を変更することができる。

ノーレイティングを導入する組織では、1on1などの上司と部下のコミュニケーションを促進する施策が同時に導入されます。

その結果として、部下のモチベーションが高まったり、上司への信頼感が高まったり、処遇への納得感が高まったりするわけです。

では、なぜ上司と部下のコミュニケーションを促進できるかというと、ノーレイティングでは、従来の人事制度におけるレイティング(点数づけやランクづけ)をする必要がないからです。

今までレイティングに取られていた時間や労力を、部下とのコミュニケーションに充てることができるようになります。

時間という有限な資源を、より建設的なことに使えるわけです。

これも、人事評価における点数づけやランクづけという、運用における労力が削減できる効果でもあります。

また、期中に目標を柔軟に変更できるのも、期末に目標の達成度などで点数をつける必要がないからです。

もし期末に点数をつけるという従来の人事制度であれば、人事評価に関わる項目を変更するのは、けっこう手間がかかります。

なぜなら、その人事評価の点数によって処遇(昇給や賞与)が決まりますから、他の社員さんや他部署にも関わる問題となるからです。

一方でノーレイティングでは、期末に点数をつけることがありませんから、期中に目標を変更しても何の問題もありませんし、同じ等級や役割の人がそれぞれ別の目標でもまったく問題がありません。

これも、ノーレイティングが非常にシンプルな仕組みであることの効果です。

ノーレイティングはシンプルな仕組みなので、設計も早くできますし、運用でも時間を建設的なことに使えます。

ただ、建設的なことが「楽なこと」とか限らないので、その辺は次回に解説したいと思います。

※生きがいラボブログ「ノーレイティングのメリット(2)」より引用

ノーレイティングのメリットは?【自分自身の経験から解説します】

ノーレイティングについての情報は、ネット上でもたくさん見れるのですが、そのほとんどが体験を伴わない二次情報です。


私は10年以上前からノーレイティングに取り組んできましたので、その体験からノーレイティングのメリットについてブログに書きました。

 

ノーレイティングの最大のメリットは、人事制度を設計・運用する労力が劇的に軽減されることです。

このように言ってしまうと「もっと違うメリットはないの?」と言われてしまいそうです。

しかし、10年以上にわたってノーレイティングの設計・運用のお手伝いをしてきた私からすると、これが最大のメリットだと感じています。

ノーレイティング以外の人事制度は、何かしらの基準に基づいて社員さんに点数をつけなければなりませんので、どうしても構造が複雑になります。

構造が複雑ということは「設計」に時間と労力がかかります。

そして、複雑な構造を持つ人事制度は「運用」にも労力がかかります。

評価項目が5項目の場合と10項目の場合では、管理職さんが人事評価にかけなければならいない時間と労力は全然ちがうのです。

 
■ノーレイティングは短い期間で設計できる
 
ノーレイティングは仕組みがシンプルになるので、制度設計にそれほど時間がかかりませんので、もっと建設的なことに時間をかけられます。

たとえば、管理職さんや社員さんへの説明にたっぷり時間をかけることができます。

加えて、ノーレイティングは仕組みがシンプルなので設計期間も短くて済み、早く制度をスタートできます。

当社の場合だと、3ヶ月ぐらいで制度設計が終わりますので、設計に着手してから3ケ月後には社員さんへの説明ができます。

また、制度の対象者さんに新しい人事制度を体験してもらうトライアル期間を設けても、1年後には制度を切り替えることができます。

 
■ノーレイティングは運用でも無駄な労力が省ける
 
ノーレイティングは、運用でも無駄な労力を省くことができます。

無駄な労力の代表例は、人事評価の調整です。

たとえば、ある管理職がAさんとBさんという2名の部下がいるとします。

評価項目にそってAさんとBさんを評価したところ、Aさんが58点、Bさんが60点だったとします。

しかし、管理職から見たときに、Aさんの方がチームに貢献しているとすれば、管理職さんはどういう行動をとるでしょうか?

管理職の多くは、Aさんの方が点数が高くなるように、どこかの評価項目の点数を変更します。

これは管理職さんの評価スキルの問題ではなく(そのケースもありますが)、人事制度の根本に関わる問題です。

画一的で限定的な評価項目では、社員さんの貢献を適切に表すことができないということです。

このような人事評価の表面的な調整は、本当に無駄な時間です。

ノーレイティングでは、この手の調整が発生しませんので、もっと建設的なことに管理職さんの時間を使うことができます。

このように、ノーレイティングは設計と運用の両方において、時間と労力を削減することができるのです。

※生きがいラボブログ「ノーレイティングのメリットは?」から引用

給与制度が自律分散型になるには「お金のリテラシー」が必要不可欠です!

給与決定プロセスをティール(自律分散)的にすると、会社が給与を決めるのではなく、自分で決めることになります。

その条件として、社員さんが「お金のリテラシー」を持っていることが必要になります。

変化が激しく多様性に富む社会では、中央集権的な組織運営では対応できず、一人ひとりが自律的に活動する必要があります。

人事制度を自律分散型にすると、給与を自己申告するというカタチになることは、今までお伝えしてきた通りです。

しかし、給与を自己申告にするためには、さまざまな課題があることも事実です。

今回のブログも、給与を自己申告にするための3つの条件について解説します。

 
■お金のリテラシーが不足していることで発生する問題
 
給与を自己申告にするための3つの条件は、下記のとおりです。

1.組織の業績情報や、部門やチームごとの生産性などの情報がオープンになっている
2.すべての社員さんの給与が公開されている
3.社員さんがお金に対するポジティブな価値観とリテラシーを持っている

前回までで3番目の「価値観」まで解説しましたので、今回は「お金のリテラシー」について解説します。

リテラシー」という言葉のイメージは、「知識や情報を理解できて活用もできる」ということですので、

お金のリテラシーという言葉は、「お金についての知識や情報を理解して活用もできる能力」という意味で使っています。

お金のリテラシーとしては、主なところでいうと下記のことが挙げられます。

・家計(収入と支出)を適切に管理する
・ライフイベントに必要なお金の準備をする
・資産形成などによってお金を増やす

これらのリテラシーが不足していると、お金で困ることになります。

収入に合わせて支出を管理できていないと家計が苦しくなりますし、ライフイベントに応じた準備も出来なくなってしまいます。

お金をしっかりとマネジメントすることは、自分が望む人生を歩んでいくためには必要なことだと思います。

 
■自分の収入を考えることはキャリアを考えることにつながる
 
お金のリテラシーのなかで、給与が大きく関係するのは「収入」に関してです。

将来のライフイベントの準備も含めてお金の計画を立てるためには、自分の収入についてトコトン考える必要があります。

私の経験では、ほとんどの社員さんは「もっと給料が多かったらいいなぁ」というような漠然とした希望は持っていても、自分の給与額について具体的な説明はできません。

自己申告型給与制度を導入していただくと、一人ひとりの社員さんに自分の貢献に見合った給与額を申告してもらうことになるのですが、多くの社員さんは「そんなの分からない」とおっしゃいます。

ご自分でも分からないなら、会社がどんな決定をしてもその額が適切かどうかは分からないはずです。

もし給与について不満を持っているのなら、自分でも適切かどうか分からないことに対して不満を持っているということになります。

給与額を会社が決定するという従来型の人事制度では根本的な解決にならない、と私が考えるのはまさにここなのです。

自分の給与額を自己申告することになれば、おのずと給与について真剣に考えるようになります。

そうすると、自分と同じ職種の求人でどれぐらいの給与が提示されているかの情報を調べるようになったり、自分の生産性がどれぐらい向上しているのかを考えるようになります。

自分の給与決定を会社任せにするのではなく、自分で考えるようになるのです。

そして、収入をもっと高める必要があるのならば、自分にどんな成長が必要なのかを考えることになります。

つまり、自分の人生とキャリアについて考えることになります。

そういう問題意識が高くなれば、お金のリテラシーも自然と高まっていきますから、自分の人生設計がより具体的にできるようになります。

ですので、社員さんがお金のリテラシーを持つことは、自己申告型給与制度の条件でもあり、導入による効果にもなります。

お金のリテラシーを持ったうえで、かつ自分の給与額について自己申告できる場があることは、給与への満足につながりますし、仕事を通した生きがいにもつながります。

私が自己申告型給与制度を提唱しているのは、社員さんが自律的に人生やキャリアの設計をすることで、生きがいが高まると考えているからです。

※生きがいラボブログ「給与制度が自律分散型になるには「お金のリテラシー」が必要不可欠です!」より引用